ティラノサウルスが痛風だった可能性があります。そもそも痛風とは「尿酸」という物質が体にたまり、足の関節などが腫れてしまう病気です。歩けなくなるほど痛くなってしまうこともあるようです。
人間の現代病の一つとしても知られ、ビールの飲みすぎでもこの病気になってしまいます。そのため、これに苦しめられるおじさまは世の中にたくさんいるようです。
ティラノサウルスが痛風だったと考えられている理由として、ティラノサウルスの化石から痛風による骨の変形した痕が見つかったためです。
これはシカゴのフィールド自然史博物館の「スー」と名付けられたティラノサウルスの化石であり、右手指の骨の一部が丸く溶けていたそうです。
はじめにも書きましたが、痛風は尿酸という物質によって引き起こされます。ティラノサウルスはビールは飲みませんが、お肉を食べて生きていました。
レバーなどの内臓肉や赤身肉などには「プリン体」と呼ばれる物質が多く含まれています。プリン体は体内で分解され最終的には尿酸へと変化します。つまり肉食獣のティラノサウルスは必然的に尿酸が体内にたまりやすくなっており、現代人の悩む痛風になってしまったのです。
それでは他の肉食動物もみんな痛風なのか、というとそうではありません。
ここで重要になってくるのが尿酸を分解する酵素である「ウリカーゼ」を体内に持っているかどうかです。ライオンはこの酵素を持ち尿酸が分解できるため、痛風にはなりません。
人間がプリン体を摂取すると最終的には尿素まで分解され、尿中に溶けて排出されていきます。しかし、プリン体の過剰摂取により、尿差の生産と排出のバランスが崩れると痛風になるのです。
一方、ライオンは尿素を「ウリカーゼ」により酸化し、水溶性の高い「アラントイン」という物質まで分解することができます。水溶性が高いため人間のように排出しきれなくなることがないようです。
p.s.酵素を持たないトカゲやカメ、ワニは痛風になるようです。
恐竜は尿酸を分解できず、痛風を患っていた可能性があるようです。自分の主食にプリン体が含まれていて、それが尿素へと変化し、自分を苦しめるとは最強のティラノサウルスも意外と不憫で、少し愛おしいと感じました。
(1080文字)
今泉忠明 監修 「おもしろい!進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典」p.96-p.97
XOチャンネル
https://med.skk-net.com/supplies/uriadec/contents/carenet/20161226/nyousan_03.html