ピザになりたがった君の歌。「広い世界と2や8や7」の中の短歌の感想文です。【永井祐】

はじめに

永井祐さんの「広い世界と2や8や7」からひとつ短歌を紹介します。会社の昼休みにはひたすら永井さんの詩集を読み漁ってます。最近忙しくて、少し疲弊していますが永井ワールドに没頭することでどうにかバランスを取っています。

今日はこの本の中からピザになりたがった君の歌(君ピザの歌)を紹介します。(注)筆者自身が勝手に君ピザと呼んでいるだけです。

君ピザの短歌

早速今日紹介する短歌がこちらです。

「4分の1カットのピザに なりたいと 言ってたきみは 花屋になった」

昼下がりの恋人同士の歌?

日常を切り取った歌です。休日の昼下がりの恋人同士でしょうか。大切な君と過ごす何気ない時間に突然、君は4分の1カットのピザになりたいと言い出します。そんなにも美味しかったのでしょうか。それともその時間を忘れたくないからそういったのでしょうか。

会話の中身は極めて、とりとめのないことです。でもそんな穏やかな時間や暖かな空気感がこの短歌の読者にも伝わってきます。

結局君はピザとは全く関係のなさそうな花屋になったようです。最後の七七(シチシチ)でクスッとしてしまいました。きっと君はそんな会話をした昼下がりのことなんて忘れてしまっているでしょう。

そんな君を愛しく、大切に思っている主人公の姿まで見えてきます。穏やかな二人の穏やかな幸せが続くことを祈らずにはいられません。

親子の思い出を詠んだ歌?

もしくは親子の句かもしれません。ピザを食べたこともを無邪気に喜ぶ子どもと、その様子を笑顔で見守るお父さん、お母さんの姿かもしれません。

こちらで解釈してもほのぼのとした家族の句で心温まります。

無邪気だった子供が独り立ちした(花屋になった)喜びと少しの寂しさが最後の七七で味わうことができます。

しばしば大切な人と過ごす他愛もない時間のことを幸せと言う人がいます。そんな他愛もない時間を具体的に、かつ時間経過を交えたエピソードとして短歌として表現する永井さんには頭が上がりません。

昔の恋人を思い出している歌?

昔付き合っていた恋人を詠んだ句かもしれません。

付き合っているときには無邪気に1/4のピザになりたいと会話していたのに、君は僕を裏切って(?)花屋になったという句かもしれません。もしかすると花屋になったというのも誰かから噂程度に聞いただけの可能性がありますし、ひょっとすると、彼女は花屋に嫁入りしたのかもしれません。

昔の楽しかった思い出を振り返りながら、彼女のことを思っている。そんな悲しい短歌なのかもしれません。

さいごに

いかがでしたか。君ピザの歌から自分が考えたことを書きだしてみました。正解がない短歌を考察することが楽しいです。みなさんもぜひやってみてください。(1180文字)

参考資料

永井祐 著「広い世界と2や8や7」

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