バンクーバーの好きなところは、バスを降車するときに「Thank you!」と大きな声で感謝を伝える人が多いところ。声に出して感謝を伝える文化は公共の空間に優しさを生んでいると思う。
一方、カナダ生活の中でチップ文化に関しては少しモヤモヤすることがある。チップ文化の根底には、サービス業の人々の収入を「お客が補う」という仕組みがあるから。つまり、従業員の給料が低いことを前提に、お客がその差額を支払うスタイル。これはまるで、「オーナーが支払うべき責任を、客に押しつけている」ようにも感じてしまう。
日本では、税金を通じて最低限の生活保障がされていたり、サービス料があらかじめ含まれていたりする。それに比べて、チップが「善意」ではなく「義務」に近い形で存在するのは、正直なところ違和感がある。
このシステムがなぜ続いているのか、その文化的な背景を知ることも大切。でも、そこにはオーナーと労働者、そして客との間の“負担の不均衡”があるように感じる。カナダでの生活を通じて、単なる習慣の違い以上に、社会構造の一端を垣間見たように感じた。