今回のトピックは英語版『葬送のフリーレン』Episode 9 “Aura the Guillotine (断頭台のアウラ)”からフェルンとリュグナーの戦いのワンシーンです。
今回深堀したいセリフはこちら。
“Underestimating me has put you in a dire predicament.”
日本語版では「だから私に隙を与えるようなマネまでした。」というセリフに相当します。直訳とは少しニュアンスは違いますが、どちらも”リュグナーの傲慢さを指摘する。”という点で一致していてとても興味深いたい肥だと思います。
不意打ちを受けたリュグナー胚珠がいえ詩として同じく不意打ちで反撃します。しかし、魔法使いとしてのプライドが高く傲慢な彼は、フェルンを正面から倒すことに固執していました。
不意打ちで命を奪えるチャンスがあったにもかかわらず、あえて見逃してしまうほどです。
その傲慢さに対し、フェルンが放ったのが冒頭の一言。
“Underestimating me has put you in a dire predicament.”
→私を過小評価したことが、あなたを深刻な窮地に追い込んだのですよ。
ここで私が特に感動したのが、”a dire predicament”という表現でした。
フェルンは師匠フリーレンや同年代のシュタルクに対しても「~様」と呼ぶほど、きわめて丁寧でフォーマルな話し方をします。
英語版でもその「格式の高さ」が忠実に再現されており、その象徴が”a dire predicament”という語彙です。
たとえば、普通なら
- serious problem
- big trouble
- issue
などもっと一般的で日常的な語を使いそうです。しかし実際には以下の単語を使っています。
★dire
英英:extremely serious or urgent
英日:極めて深刻な、切迫した
語源がラテン語の”dirus(恐ろしい・不吉な)”。
日常会話ではあまり使われず、重々しく、文学的・格式高い響きを持つ単語です。
★predicament
英英:a difficult, unpleasant, or embarrassing situation
英日:困難な状況、窮地、苦境
こちらも一般的にproblemよりもフォーマルで、英国文学にも出てくるタイプの語彙です。
フェルンは常に礼儀正しく、冷静で、落ち着いた人格を持つキャラクターです。
その特徴が英語版でも「語彙の品格」という形で表現されている点に、私はとても感動しました。
“dire predicament”という「イギリスの貴族が使いそうな格式ある英語」を選んでいるあたり、フェルンの育ちの良さや品格を言語的に描いており、翻訳の醍醐味を感じます。
また日本語の「隙を与えるようなマネまでした。」という言い回しとはニュアンスも視点も異なっています。つまり日本語版は行動に焦点を当て、英語版は結果と表に焦点を当てています。この違いもまた言語と演出の面白さを感じさせるポイントです。
- フェルンのセリフ”a dire predicament”は一般的でないフォーマルで重厚な言い回し。
- フェルンの丁寧な話し方を英語で再現するための絶妙な言葉選び。
- 日本語版と英語版で焦点の当て方が異なり、対比が面白い。
- フェルンというキャラクターがセリフから際立っている。
- 葬送のフリーレンの英語版もめっちゃ面白い。
