久しぶりに青空文庫で芥川龍之介の『羅生門』を読みました。短い作品だけれど、読み終わったあとに、なんともいえない感情がじわっと残る作品です。
今回特に心に残ったのは、「人間の正義感の軽さ」でした。
人は正義を語るとき、時にそれが侮蔑や優越感にすり替わっていることがあります。そしてその「正義」も、環境や立場が変われば簡単に揺らいでしまうものなのかもしれないと感じました。
作中では、飢饉により生きることすら困難な時代背景が描かれています。
下人は、自分の信じていた善悪の価値観が崩れていくのを感じながらも、最後には老婆の着物を奪って立ち去ります。かつてはそれを「悪」と断じたかもしれない自分が、もしその立場にいたらどうするのか──
そう問われているような気がしました。
「自分だったらどうしただろう?」
何度読んでも、自分の中の価値観が試されるような気がするのが、『羅生門』という作品のすごさだと思います。
文学って、時代を越えて、私たちの中の「人間らしさ」に向き合わせてくれるものですね。